わたくしが子どもの頃
親戚の家へ遊びに行ったときのこと、
暇にあかせておばさんが
「手相をみてあげようか。こうみえてもおばちゃんは手相が分かるんやで」
とわたくしの手をとり、
子ども心に
「ボクの運命を教えてもらえるんだ」
とドキドキして手を差し出すと
わたくしの手に一瞥をくれただけで急に話題をそらしてしまい
それ以来、手相について語られることはなく
あれはいったい何だったのだろう。
わたくしの手のひらに何か不吉なものを読み取ったのか。
今度お会いしたときにと思っていても、
実際お会いすると忘れて家に帰ってから思い出すのが常。
そうこうするうちにおばさまは鬼籍に入られ
訊ねようにも訊ねることができなくなり、
あんな恐怖を演出できる占い師なぞそうそういるはずもなく、
もしかすると逸材だったのかもしれません。